要支援者名簿も避難所もあてにできない?!~発達障がい児と家族のための防災

家族の防災
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30年以内に70%の確立で発生すると予測されている首都直下地震。あなたと、あなたの家族は備えができていていますか。

障がいのあるお子さんと一緒に福祉避難所に行けば助かると思っていますか?
避難行動要支援者名簿に登録すれば必ず誰かが助けに来てくれると思っていませんか?

おどかすわけではありませんが、公助と共助には限界があることが取材で明らかになりました。障がいのある子どもと家族が助かるための”自助”の備えについて、今からできることをご確認ください。

【公助】福祉避難所ってどこにあるの?使えるの?

住んでいる町の「福祉避難所」がどこにあるのかご存知でしょうか。福祉避難所は一般の避難所では受け入れることが困難な高齢者や障がい者のための避難所です。「二次避難所」という言い方をする自治体もあります。
福祉避難所がどこにあるのかを確認するために東京の西側のA市、東側のB区、千葉県のC市に電話で問い合わせをしてみました。質問した内容は以下の3つです。

にっこり

「福祉避難所はどこにありますか?」
「そこには障がい児のための備蓄はありますか?」
「障がいのある子どもと家族は福祉避難所を利用できますか?」

同じ質問を3つの区市に問い合わせた結果、厳しい現実が明らかになりました。

東京都A市 災害対策課と障害福祉課からの回答
「市内には11ヶ所の福祉避難所(二次避難所)があります。ひとつは福祉センターで、他の10ヶ所は特別養護老人ホームにお願いしています。障がい者の施設は福祉避難所に指定されていないので、障がい児に対応した施設が必要な場合は隣の市にある●●園まで行って下さい。福祉避難所には特別な備蓄はないので一般の避難所まで物資をもらいに来て貰う必要があります。福祉避難所はあくまで”場所の提供”です。」

東京都B区 災害対策課と障害福祉課からの回答
「区内には10ヶ所の福祉避難所(二次避難所)があります。福祉会館を除く9ヶ所は特別養護老人ホームなどの高齢者施設です。その他にも協定を結んだホテルが避難所として利用できますが、福祉避難所を利用していただけるかどうかは区の災対福祉部の判断にしたがってください。より必要性の高い人から入っていただきます。」

千葉県C市 市民生活部防災危機管理課と健康福祉部障害者支援課からの回答
「市内には9ヶ所の福祉避難所(二次避難所)があります。ほとんどが高齢者施設です。福祉避難所のための備蓄はありません。小学校や中学校などの一般の避難所でも備蓄が追いついていない状況です。」

区や市の「公助」にできることには限界があるようです。B区の災害対策窓口の担当者からは以下のことも言っていました。

職員おろおろ

よく『避難所に行けば何か物資がもらえる』と思っておられる人がいるのですが、まずは普段から自分で備蓄をして下さい。区が用意しているのは地域の人数分✕1日分で、東京都からの物資が届けば2日分。区と都を合わせて3日分までしか用意できないので、あとは遠方からの物資を待つことになります。

【共助】避難行動要援護者名簿は必ず助けに来てくれるの?

「避難行動要支援者名簿」をご存知でしょうか?災害が発生した時に自力で避難することが困難な人を名簿に登録して、警察署や消防署、消防団、町内会、民生員などが名簿を共有して、支援に向かうためのものです。
この名簿に登録すると、誰かが必ず助けに来てくれるのでしょうか?先ほどの3つの区市の担当者に聞いてみました。

東京都A市 災害対策課と障害福祉課からの回答
「申請をいただければ名簿に記載して情報を共有します。そして、名簿を基にして災害時の個別支援計画を作成していくのですが・・・いまはまだ着手できていない状況で・・・。モデル地区の●●2丁目と▲▲1丁目はやっているみたいですが・・・まだA市としては個別の支援計画はできていない状況です・・・・。」

東京都B区 災害対策課と障害福祉課からの回答
「名簿に登録しても必ず助けに行くというものではありません。消防署や消防団は消火活動や緊急輸送道路の整備に向かう可能性があります。物資の輸送が滞るわけにはいかないからです。町内会や地域の民生員さんが行ってくれるかもしれませんが、義務ではないです。」

千葉県C市 市民生活部防災危機管理課と健康福祉部障害者支援課からの回答
「名簿に登録いただければ関係機関と自治体が共有しますが、去年(平成27年)から始まったばかりの制度なので、普段からの地域や近所の助け合いが第一です。日頃から安否確認や出来る範囲での支えあいをして、何かあった時に備えて下さい。」

調べたのは3つの区市だけですが、どの担当者も「避難行動要支援者名簿に登録することは必ず助けに行く約束ではない」という内容のことを言っていました。地域の「共助」にも限界があるようです。では、どうすれば災害時に家族を守れるのでしょうか。

職員おろおろ

名簿はあくまできっかけづくりです。まずは自分の身は自分で守って下さい。お子さんの場合は保護者の方が守ってあげて下さい。

【自助】子どもを守るためにできること ~物・家・情報・コミュニケーションの備え

福祉避難所のような公助も、要援護者名簿のような共助も、できることは限られています。残っているのは自助の備えをすることです。ここでは、発達障がいのあるお子さんのいる家庭の防災を「物の備え」「家の備え」「コミュニケーションという備え」「情報の備え」という4つの項目に分けてご紹介します。
※障がい特性によって必要なものも異なるため、ここに載っている備えをすれば万全ということではありません。

子どもと一緒に取り組む“物の備え”

・障がい児のための防災リュック
防災リュックの中身をお子さんと一緒に考えて、日頃からチェックして入れておきましょう。お子さん自身が自分を守るために必要な物を考えたり、家族と一緒に考えて入れることが大切です。自分を守るために必要なものは日々変化します。ときどき見なおして、日にちを入れて書き換えていくと記録にもなります。重すぎないように注意して、3日間くらいのことを考えて準備してください。

防災リュック
リンク:東京女子大学現代教養学部 前川あさ美教授 「自分を守るカード(第三版)」
リンク:国立障害者リハビリテーションセンター研究所 北村弥生先生 「災害時要援護者支援に関する研究」

保護者が取り組む“家の備え”

先ほどの防災担当者への電話取材を振り返ると、福祉避難所は障がいのあるお子さんに対応できる場所ではないかもしれません。そのため、自宅を災害に備えておくことは家族を守るために重要です。地震負傷者の30~50%は家具類の転倒や落下、移動が原因です。部屋に物を置かないことが最大の防御ですが、その次にできることは、下敷きにならないように家具類を配置することです。

その他にも、家の耐震性のチェックを行い、気になる項目が多ければ専門家による耐震診断を受けるのもひとつの方法です。東京都の場合耐震化に関する相談窓口があり、自治体によっては耐震診断や耐震改修に要する費用を一部助成する制度を設けている場合もあります。

東京都防災ページ 家具・家電転倒防止対策
東京都都市整備局市街地建築部 建築企画課 03-5388-3362

家族みんなの“コミュニケーションという備え”

3.11の時に家族の安否確認ができるまで不安な時間を過ごした人は多いのではないでしょうか。帰宅困難になって勤め先から帰れない場合や、お子さんが登下校中でどこにいるのかわからない場合にはどうするのか。家族で災害の時を想定した防災会議をしてみませんか。

《防災会議のテーマ例》
・家族同士の安否確認の方法
・どの時間帯はどこにいるのかを確認
・NTT災害用伝言ダイヤル171と災害用伝言サービス
・集合場所、避難場所、避難経路の確認
・家の電気のブレーカーやガスの元栓の位置、操作方法の確認
・非常用持ち出し品、薬、安全グッツの確認
・避難行動要援護者名簿について確認

家族と地域の“情報の備え”

自分の情報と家族の情報、そして障がいのあるお子さんの情報を第三者にわかるように記しておくことは、情報の備えになります。一般的な情報カード以外にも障がいのある人が災害時や日常生活の中で困ったときに、周囲に障がいへの理解や支援を求めるための「ヘルプカード」というものがあります。厚生労働省が発行する一般的な「ヘルプカード」と自閉症協会が作成した「助けてカード(自閉症SOS)」をご紹介します。

《ヘルプカード》
「緊急連絡先や必要な支援内容などが記載された「ヘルプカード」は、障がいのある方などが災害時や日常生活の中で困ったときに、周囲に自己の障がいへの理解や支援を求めるためのものです。」
ヘルプカード
リンク:東京都福祉保険局「知っていますか?ヘルプカード」
《自閉症助けてカード》
自閉症助けてカード
リンク:自閉症協会「助けてカード」

今すぐできること

困った顔

誰かをあてにするのではなく、自分達で備えないとまずいですね。今週末、私は家の防災をします!

 3つの区市の災害対策課に取材をしてみて、5年前の教訓は活かされているのか不安になりました。公助や共助をあてにして「なんとかなるだろう」と思っていると、どうにもならない可能性が高いことを実感しています。まずは、お住まいの自治体の災害対策課に電話をしてみることから始めませんか。この危機感を共感していただけると思います。自分と家族を守るために、できることからはじめてみましょう。

《関連記事》
発達障害とは? ~発達障害の定義・原因・種類・症状・相談窓口まとめ
発達障がい児・者と家族の3月11日

《この記事の参考にさせてもらった資料》
日本自閉症協会 防災・支援ハンドブック
・発達障害情報・支援センター(災害時の発達障害児・者支援について)
・発達障害情報・支援センター(災害時の支援に役立つ資料)
・東京女子大学現代教養学部 前川あさ美教授 「自分を守るカード(第三版)」
・国立障害者リハビリテーションセンター研究所 北村弥生先生 「災害時要援護者支援に関する研究」
・独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(災害時における障害のある子どもへの配慮)
東京都防災ホームページ
・電話取材に応じてくださったA市B区C市のご担当者様、ありがとうございました。もっと頑張ってください!

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