”参加”と”排除”について考える~公立学校の発達障害に関する意識調査から

参加と排除の見取り図
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発達障がいのある子は「困った子」なのでしょうか。
それとも、周囲に理解されていないために「困らされている子」なのでしょうか。

東京都教育委員会調査の結果を手がかりに、教室での参加と排除について考えていきます。

都内公立学校における発達障害に関する意識調査より

東京都教育委員会の調査「都内公立学校における発達障害に関する意識調査」は発達障害の児童に必要な教育基盤を明らかにするための調査です。
教職員と保護者を対象に、困難を感じている点を把握するこころみです。

その中で「保護者が学校に充実を期待すること(保護者回答)」と「指導で困難を感じる場面(学級担任回答)」で困難の度合いが高かった上位3つは、それぞれ以下の内容でした。

    保護者が学校に充実を期待すること(保護者回答・小学校)

  • 1: いじめ対応など友人関係(理解啓発を含む)への配慮(64.8%)
  • 2: 教員と保護者の情報共有・連携(60.2%)
  • 3: 教員の発達障がいに関する理解の向上(42.6%)

    指導で困難を感じる場面(学級担任回答・小学校)

  • 1: 集団活動の指導(86.4%)
  • 2: 教科の指導場面(84.3%)
  • 3: 友達との関係についての指導(83.9%)

これらは繋がりあっている問題のようにも思えます。
保護者からみても、学級担任から見ても、「集団活動」や「友達との関係」「小規模のグループ」など、集団の中で他の生徒と関わる場面に困難があるようです。

この調査の結果を手がかりに教育への参加と排除について考えていきます。

参加の平等とはなんだろう

発達障がいがあるから集団に参加することが難しいのか、発達障がいについての理解がたりないから参加しにくいのか。
発達障害の生徒は「困った子」なのか「困らされている子」なのか。

まるで「鶏が先か?卵が先か?」のような言い方ですが、視点をどこに置くのかによって対応は変わってきます。
障がいへの支援や配慮について、欧米でよく用いられる以下の図を見てみましょう。

3人が同じフェンスの前に立っているが、フェンスの向こうの景色が見えるのはひとりだけ。みえにく、もしくは全く見ることのできない2人に対して不平等が生じている。

身長の異なる3人が同じ柵の前に立っています。

ひとりは背が高いので柵の向こう側が見えています。

真ん中の人は少しだけ見えています。

背が低い人は柵の向こうが全く見えていません。

同じ柵の前に立っているのに、身体的な違いによって不平等が生まれています。
この3人が同じように柵の向こうの景色を見えるようにするためには、以下の様な工夫が必要です。

背の低い2人に、それぞれの身長に応じた台が与えられている。3人が同じ目線でフェンスの向こうの景色を見ることができた。

背の高い人はそのままに。

真ん中の人には少しだけ台を渡します。

背の低い人には高めの台を渡します。

それぞれの体の状況に合わせた工夫をすることで、3人そろって柵の向こうの景色をみることができました。
このような工夫は「支援」や「配慮」と言い換えることもできます。

そして、4月に施行される障害者差別解消法では「合理的配慮」といいます。

参加と排除の見取り図

集団の中でみんなと同じ対応をするのが平等なのでしょうか。
あるいは、みんなとは異なる工夫(支援 / 配慮)をすることで結果的に平等になるのでしょうか。
「参加と排除」について、以下の見取り図に当てはめて考えてみます。

この見取り図は東京大学大学院総合文化研究科で障害について研究する榊原賢二郎先生の「処遇と効果の四象限図式」を元にしています。

線が2本クロスして4つの要素を表している。縦軸上は参加、下は排除。横軸左はちがう対応、右は同じ対応。

Aゾーン:異なる対応をすることで集団に受け入れられている状態
ひとりひとりの特性に合わせた支援や配慮をすることで、結果としてみんなが参加できる状態です。
ホッとした顔

うちの娘は発達障害に加えてアレルギーがあります。そのため、調理実習で作ったものを娘だけが食べられませんでした。今度の先生は娘が食べられる材料について事前に相談してくれたので、みんなとは少しちがうメニューですが、調理と実食に参加できてとてもうれしそうでした!

Bゾーン:同じ対応をすることで集団に受け入れられている状態
わかりやすい平等。障がいに関係なく誰もが参加して楽しめる状態を指します。「ユニバーサルデザイン」という言葉が当てはまります。
ホッとした顔

息子の担任の先生は黒板に4つのカードを貼って、うちの子だけでなくみんなが授業の流れを分かりやすくする工夫をしています。「どの生徒にとっても、今何をしている時間なのかが分かりやすくなり、次に何をやるのかの見通しが付けられる」のだと先生から伺いました。

Cゾーン:異なる対応をすることで集団から排除されている状態
わかりやすい差別状態。障がいを理由に参加させないことや、誤った配慮、やりすぎな支援をすることが排除に繋がっている状態のことです。
無理な顔

息子は多動がありますが、電車の絵を描くことがすきなので紙と鉛筆を渡すとおとなしく座っています。そのせいで、他の子が教科学習をしている間も、ずっと紙と色鉛筆を渡されて絵を書いているようです。そのほうが先生はラクでしょうが、これが教育と言えるのでしょうか。

Dゾーン:同じ対応をすることで集団から排除されている状態
「特別扱いはしません!」など、本来必要な支援や配慮がないために排除されている状態です。
無理な顔

息子は学習障害のため文字を書くことが苦手なのですが、発達グレーゾーンなので支援もありません。学校の先生からは「まだ書いてないの?」「なんでちゃんと書けないんだよ」などと言われ、最近は先生から無視をされている状態のようです。。。

「みんなと同じ」だから参加している状態になるわけではありません。

かといって、異なる対応をすることは「参加」にも「排除」にもなりえます。

まとめ

東京都の学校教育の意識調査を元に「参加の平等」と「参加と排除の見取り図」をご紹介しました。

この見取り図は意識調査であきらかになった学校教育の問題を解決するツールにはなりませんが、問題がどこにあるのか、問題の所在を探るためには役立つのではないでしょうか。

「困った子」ではなく「困らせられている子」の「困り」の所在を見つけるためにご活用ください。

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《この記事の参考にさせてもらった資料》
東京都教育委員会『都内公立学校における発達障害に関する意識調査』(2015) p,67-70
・榊原賢二郎,2015,「社会的包摂と身体―障害者差別禁止法制後の障害定義と異別処遇を巡る考察―」東京大学大学院総合文化研究科2015年度博士論文
・沖田☓華『はざまのコドモ』(2016)ぶんか社

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